さて、5次の魔方陣世界には、対称魔方陣であり、かつ、完全魔方陣であり、さらに正規相愛魔方陣である魔方陣が全部で4種存在していました。そして、それらにはそれぞれ単位行列変換行列というものが存在しています。
これらの変換行列は担当する正規相愛魔方陣に対し、前からかけても、後ろからかけても(行列の積で)単位行列を生成するものたちです。
ここで一つ重要なこととして、すべての正規相愛魔方陣がこのような単位行列変換行列を有しているとはかぎらないということはおさえておくべきでしょう。いえ、魔方陣にかぎらず任意の格子体に対して、それが単位行列変換行列を持つためにはその格子体の行列式の値が0でないことが必須となります。
以前にもお話ししましたが正規相愛魔方陣Ⅰ~Ⅳ型は0ではない行列式の値をとります。
このように行列式≠0となるのは珍しくないことのように思えるかもしれませんが、そうでもありません。これまでわたしたちが考察の対象としてきた3次、4次、6次、8次の魔方陣たちはいずれも行列式の値=0でした。またわたしたちにとってもっとも馴染みのある次のようなプレーン超格子体も、これを5次正方行列とみなし、行列式を計算すると0となることがたしかめられます。
したがって、このようなプレーン超格子体には、なにかをかけあわせて単位行列になるような5次正方行列は存在していないということです。